APIでChrome拡張機能をデプロイする手順

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Chrome Web Store APIを使えば、APIでChrome拡張機能をStoreへデプロイできます。

本記事では「APIを使うために必要なID・トークンの準備」「APIの使い方」「APIのラッパーツールの紹介」をします。

前提

Chrome Web Store APIはDeveloper Dashboardにて一度手動でアップロードした拡張機能でしか使えません。
また、ダッシュボードの入力欄で「ストアの掲載情報」「プライバシー」の欄も埋める必要があります。つまり、manifestのpermissionsが変わったときも手動の操作が必要です。

IDやトークンの種類

必要となるIDやトークンは次の4つです。

  • Extension ID(拡張機能のID)
  • Client ID(クライアントID)
  • Client secret(クライアントシークレット)
  • Refresh token(リフレッシュトークン)

Extension IDは文字どおり拡張機能のIDです。https://chromewebstore.google.com/detail/xxxxxxxのような拡張機能のURL末尾の他、Developer Dashboardからも確認できます。ドキュメントによってはItem IDと表記されることも。

Client ID、Client secret、Refresh tokenはAPIの認証で必要となる情報です。次の項目からその取得方法を解説します。

基本的には公式ドキュメントの手順を詳しく&日本語化したものです。

APIの有効化

Google Cloudのプロジェクトを作り、そこからAPIを叩けるようにします。

まずGoogle Cloud Consoleにアクセスし、プロジェクトを作成します。

プロジェクトの作成

プロジェクト名は自分が分かりやすい名前にしましょう。「場所」は「組織なし」のままで問題ありません。

プロジェクト名の入力

プロジェクトが作成できたらhttps://console.developers.google.com/apis/library/chromewebstore.googleapis.comにアクセスして、APIを有効化します。

APIの有効化

OAuth同意画面の設定

ここでは権限を許可するか尋ねる画面を作っていきます。

こういった画面に皆さんも見覚えがあるのではないでしょうか。

同意画面

https://console.cloud.google.com/apis/credentials/consent(OAuth同意画面の作成)にアクセスし、User TypeはExternalで作成します。

OAuthのUser Type

次のとおり埋めていきます。

  1. アプリ名に自分が分かりやすい名前をつける
  2. 「ユーザーサポートメール」「デベロッパーの連絡先情報」も必須項目なので埋めて次へ
  3. スコープはスルーして次へ
  4. テストユーザーに自分のメールアドレスを追加して次へ

左サイドバーの「OAuth同意画面」をクリックし、「PUBLISH APP」を押してPublishing statusを公開へと切り替えます。

PUBLISH APPのボタン

これでOAuth同意画面の設定は終了です。

認証情報の作成

https://console.developers.google.com/apis/credentialsにアクセスします。

「認証情報を作成 > OAuthクライアントID」をクリックします。

OAuthクライアントIDの作成

「アプリケーションの種類」は「ウェブアプリケーション」、名前は自分が分かりやすいようにつけます。

クライアントIDの作成画面

「承認済みのリダイレクトURI」にhttps://developers.google.com/oauthplaygroundを加えて作成します。

これでクライアントIDとクライアントシークレットが作成できました。

トークンの取得

続いて、アクセストークンとアクセストークン再取得のためのリフレッシュトークンを手に入れます。

Playgroundの設定

先ほど設定したURIOAuthのPlaygroundにアクセスし、画面右上の歯車をクリックして設定を開きます。
「Use your own OAuth credentials」をクリックし、先ほど作成したクライアントIDとクライアントシークレットを入力して閉じます。

Playgroundの設定

APIを選ぶ

ここで試したいAPIを選びます。

Chrome Web Store APIはリストにありません。URLhttps://www.googleapis.com/auth/chromewebstoreを直接「Input your own scopes」に入力します。

APIの選択

「Authorize APIs」を押すと、Googleアカウントの選択画面になります。
使用するアカウントを選択すると、おそらく警告画面が出ますがあなた自身が作ったものなので問題ありません。
画面下部の「詳細 > 【アプリ名】に移動」をクリックして移動しましょう。

警告画面が出る

先ほど一生懸命作った同意画面が姿を表しました。

同意画面

【アプリ名】がGoogleアカウントへのアクセスをリクエストしてます

自分で書いたアプリ名であれば許可しましょう。ここでアプリ名がPlaygroundの場合、自分のクライアントIDとクライアントシークレットを使えていません。前の項目「Playgroundの設定」からやり直してください。

リフレッシュトークンの取得

Authorization code(認可コード)が取得できました。ここらへんのしくみを知りたい方向けの参考サイトは後述します。

「Exchange authorization code for tokens」を押すとアクセストークンとリフレッシュトークンを入手できます。

リフレッシュトークンを生成

このリフレッシュトークンをメモしておきましょう。

APIを試してみる

ここで終わってもよいのですが、PlaygroundですぐにAPIが試せるので試してみましょう。

APIを試す

次のURLをRequest URIに入力しましょう。XXXXXXXXXXにはExtension IDを入れてください。

https://www.googleapis.com/chromewebstore/v1.1/items/XXXXXXXXXX?projection=DRAFT

「Send the request」を押して次のようにレスポンスが返ってくれば成功です。

リクエストの結果

公式ドキュメントだとパラメータ無しでも返ってくるように読めます。しかし、パラメータとして末尾に?projection=DRAFTを加えないと403が返ってくるっぽいです。

APIの使い方

ここまでくれば後は公式ドキュメントのとおりにAPIを叩くだけです。
curlなどのコマンドを使ってもよいですが、ここではChrome Web Store APIのラッパーをいくつか紹介します。

ツール名とリンク内容
WXTのsubmitChrome拡張機能フレームワークのコマンド
publish-browser-extensionCLI。WXTの内部でも使われている。
chrome-webstore-upload-cliCLI

WXTであればzip化からデプロイまでコマンドででき、GitHub Actionsの例も載っています。ただし、拡張機能のフレームワークなのでベンダーロックインみたいな感じですね。
単にCLIとして使いたいのであれば、publish-browser-extensionやchrome-webstore-upload-cliを使うとよいでしょう。

ここからはWXTでの例を紹介しますが、他のツールでも似たような流れです。

WXTのsubmitの流れ

デプロイする前に、拡張機能のmanifestのversionを上げたかどうか確認しましょう。

zip化

デプロイする前にまずzip化します。
wxtのzipコマンドでは、ビルドとzip化の両方を実行してくれます。
例ではpnpmを使ってます。他のパッケージマネージャーの方は適宜読み替えてください。

Terminal window
pnpm wxt zip

テンプレートを使っていればpnpm run zipでも実行できるはずです。

コマンドの準備

続いて、用意したIDやトークンをenvファイルに記載します。これもコマンドでできます。

Terminal window
pnpm wxt submit init

指示どおり回答するだけでenvファイルができます。

wxt submit initの実行結果

生成された.env.submitは次のようになっています。リフレッシュトークンを新しく生成しない場合は自分で書いておきましょう。

.env.submit
CHROME_EXTENSION_ID="xxxxxxxxxx"
CHROME_CLIENT_ID="xxxxxxxxxx"
CHROME_CLIENT_SECRET="xxxxxxxxxx"
CHROME_PUBLISH_TARGET="default"
CHROME_SKIP_SUBMIT_REVIEW=false
CHROME_REFRESH_TOKEN="xxxxxxxxxx"

.env.submitを間違ってGitHubにアップロードしないように、.gitignoreに追加しておきましょう。

.gitignore
# ...
.env.submit

GitHub Actionsを使う人は、.env.submitに記載するのではなくsecretsとして登録しましょう。

デプロイ前のdry-run

いよいよデプロイですが、その前にAPIが叩ける状態か確かめるためにdry-runをしてみます。

オプション--chrome-zipには.outputディレクトリに生成されたzipファイルを指定します。

pnpm wxt submit --dry-run --chrome-zip .output/wxt-starter-1.0.1-chrome.zip

次のようになっていれば準備は完了です。

dry-run

Missing required configのようなエラーが出た場合は.env.submitの中身を見直しましょう。筆者はリフレッシュトークンを設定し忘れてエラーになったことがあります。

本番デプロイ

--dry-runを外せばデプロイできます。

Terminal window
pnpm wxt submit --chrome-zip .output/wxt-starter-1.0.1-chrome.zip

成功すれば次のような表示が出ます。

submitの成功例

念の為、Developer Dashboardを開いて確認しましょう。拡張機能のバージョンが新しくなり、ステータスが「審査待ち」に変われば成功です。お疲れさまでした。

しくみの理解

OAuth、トークン周りの話を理解したい人向けに、参考になったリンクを載せておきます。


以上、Chrome Web Store APIを使ったデプロイ方法でした。

最初は手間ですが、アップデートが多い拡張機能ではやっておくと楽になります。今回紹介したAPIを活用したGitHub Actionsの利用も検討してみましょう。前述のとおり、WXTであればGitHub Actionsの例も載っており、参考になります。